本サイトがもとづくプロジェクトについて

本サイトに掲載される『八千頌般若』梵蔵・蔵梵データベースは、平成27年(2015)から始まる、以下の三つの共同研究の成果である。

  • 平成27(2015)~平成29(2017)年度 科学研究費助成事業 基盤研究(C)
    「八千頌般若経のデータベース及び言語検索ツールの構築」(研究課題番号15K02044)
    研究成果報告書:『八千頌般若経』梵-蔵、蔵-梵対照表(2018年2月)
    研究代表者 渡辺章悟(東洋大学文学部教授・東洋大学東洋学研究所研究員)

  • 平成27(2015)~平成29(2017)年度 井上円了助成 東洋大学東洋学研究所プロジェクト
    「般若経の教理・儀礼・実践の総合的研究」
    研究報告書:般若経の教理・儀礼・実践の総合的研究(2018年2月)
    研究代表者 渡辺章悟(東洋大学文学部教授・東洋大学東洋学研究所研究員)

  • 令和元年(2019)~令和3(2021)年度 井上円了助成 東洋大学東洋学研究所プロジェクト
    「初期大乗仏教の成立と展開―テクスト・ことば・思想」
    研究代表者 渡辺章悟(東洋大学文学部教授・東洋大学東洋学研究所研究員)

以下にその研究の概要を示しておきたい。
①科研費基盤研究(C)の研究:

 初期大乗を代表する般若経典群の中で最古とされる『八千頌般若』の新写本が、近年、バーミヤンから出土した(スコイエン・コレクション)。本研究は、同写本の網羅的研究のための基礎研究として現存のネパール系写本との比較の他、チベット語テキストとの内容の異同を調査し、梵蔵対照テキストを作成するとともに、『八千頌般若』に対応した検索ツール作成と多言語対照術語のデータベース構築のために梵蔵術語の索引整備を行うことを目的としたものである。
 このプロジェクトは研究分担者として東洋大学文学部の山口しのぶ教授、岩井昌悟教授、東洋大学東洋学研究所の石川美恵客員研究員、現銀谷史明客員研究員がメンバーである。特に現銀谷氏はプロジェクトの事務を担い、石川氏は入力支援シートを開発し、本研究に貢献した。
 まず、索引作成のための資料として、上田昇・計良龍成によってデータ化された Sanskrit Word-index to the Abhisamayālaṃkārālokā Prajñāpāmitā-vyākhyā (U. Wogihara editon)(Sankibo, 1998)を用い、本書に基づいて、サンスクリット語―チベット語対照語彙データを作成した。
 入力作業では『八千頌般若』のサンスクリット語ーチベット語の対照テキストを作成し、テキストをより細かなユニットに分け、対照語彙及び所在の抽出の効率化を図ったが、後により効率的な入力作業を行うために入力支援シートを作成した。これは上記のWord-indexのアルファベット順配列から、所在順(ページ順)配列に変換したシートであり、これにより『八千頌般若経』のサンスクリット語テキストを冒頭から読み下して、対応チベット語をデルゲ版チベット大蔵経の中に見つけることができるようになった。
 入力作業に当たっては次の研究者の協力を得た。伊久間洋光(東北大学大学院)、板野弘映(佛教大学大学院)、ウルジージャルガル(東洋大学東洋学研究所奨励研究員)、庄司史生(立正大学講師)、堀内俊郎(東洋大学東洋学研究所客員研究員)、宮崎展昌(大谷大学助教)、横山裕明(大正大学総合仏教研究所研究員)、以上7名(所属は2018年当時)である。なお、第1章は庄司史生、第2章は宮崎展昌が入力している。

②平成27(2015)~平成29(2017)年度 東洋大学東洋学研究所プロジェクト:

 本プロジェクトでは、引き続き『八千頌般若』について、梵・蔵・漢・現代語および英訳等と比較し翻訳・研究を進めつつ、その術語を採取し、多言語対応の語彙を蒐集したデータベースの構築を企画した。
 その研究成果として、報告書『般若経の教理・儀礼・実践の総合的研究』を刊行したが、それには4編の論文と石川・現銀谷編「Tshamdrak Thadrak Nyephug 寺写本・三本校合テキスト」を収録している。なお、この校合本はチベット語訳第一章のみにとどまる。

③令和元年(2019)~令和3(2021)年度 東洋大学東洋学研究所プロジェクト:

 この研究プロジェクトでは①と②の共同研究に基づき、『八千頌般若経』の梵蔵・蔵梵語彙索引データベースの構築を進めた。前回までに刊行されていなかった第3章、第4章、第5章について入力を始め、入力を完了している第6章は見直しを行い、さらに第7章から第11章までを新規に入力するために、庄司史生(立正大学准教授)、宮崎展昌(鶴見大学仏教文化研究所・専任研究員(准教授))、佐藤直実(宗教情報センター研究員)、鈴木健太(北海道武蔵女子短期大学教授)、平林二郎(大正大学綜合佛教研究所研究員)、伊久間洋光(大正大学綜合佛教研究所研究員)の計6名の研究協力者により、各々割り当てられた章の語彙を入力していく計画を立て、実際に進めつつあった。
 ところが、2年目が終了しようとする際、次年度(3年目)の継続申請の手続きに関して事務局の遺漏から申請が叶わず、計画は中断してしまった。それまでに、第8章の入力が完了し、第10章は約1700件中1600件入力済み、第11章は3394件中3069件の入力を終えた。その他の章についても、2021年の夏までにはおおよそ入力完了の予定であったが、上記の事情から計画が途絶し、現在も梵蔵・蔵梵の対照語彙データベース作成は留保されている。

 このように、本研究プロジェクトはいまだ未完の段階ではあるが、われわれの研究プロジェクトの共同研究者の一人であり、かつ藤井淳・駒沢大学教授を代表とする科研プロジェクトの一員でもある宮崎展昌氏の慫慂により、現在までに入力できたデータを共同研究のために提供し、『八千頌般若』の研究の推進に役立てることを承認した。
 ここに提供するデータは、上記の「八千頌般若索引」にかかわる三つのプロジェクトの共同研究によって蓄積されたものであり、このような地道な努力が、将来の文献研究に大いに寄与することを願ってやまない。
 最後になったが、このプロジェクトに最初からかかわり、これまで中心的な役割を果たしてくれた東洋大学東洋学研究所の石川美恵研究員・現銀谷史明研究員をはじめ、関係者全員のご尽力に心より感謝したい。

2022年3月
東洋大学東洋学研究所所長
       渡辺 章悟

本サイトの制作について

本サイトは東洋大学仏教会・同青年会のサイトhttps://toyo-ymba.net/のもとで公開しています。

本サイトの枠組みは、主に、研究協力者の宮崎が作成したものです。 すでに宮崎が構築し、先行して公表している mahayana-scriptures.com で利用したものと同じWebフレームワークを用いて構築しています。

具体的には、Python で実装された Web アプリケーションフレームワークである Django、および、フロントエンドライブラリの Bootstrap を主に活用しています。 バックエンドのデータベースには MySQL、Webサーバシステムには、Nginx および gunicorn を利用しています。 本サイトの構築にあたっては、種々のモジュールや Web 上で得られた情報・知見を様々なかたちで利用させていただいています。

なお、本サイトの運用に際しては、科研費基盤研究(B)「dharmadhatu(法界)概念の研究―初期大乗経典・古訳の分析を中心として―」(20H01185)で運用しているVPSサーバーを利用しています。

本プロジェクトに関するお問い合わせや Web サイトの不具合などに関しては下記までご連絡ください。

(ただし、返信にはお時間をいただく場合がございます。)

toyo.ymba gmail.com